おれは もう 走って 走って 走って

疲れた

腰かけに腰かけ、走ることは

やめた

 

空を見れば 飛んでいるのは

カラス、

それから また 飛んでいるのは

カラス、

それから また 飛んでいるのは

カラス、

それから また 飛んでいるのは

カラス、

何故 おれは 飛ばないのだろう?

ああ、なんたる無念!

 

座っているのは うんざり

ちょっと飛びたくなった

 

助走をつけて とびあがる

えい!と叫んで

足を ばたんと 動かして

手をふれ

泳げ 飛び上がれ。 

 

鷹が おれを 守ってくれる

風は 追い風

下には 川と森

上は 暗雲の空。

 

飛ぶのは うんざり

ちょっと歩きたくなった

とこ

とこ

とこ

とこ

歩きたくなった。

 

庭園を散策

お花を集めて

林檎の木に登るよ

空に林檎の実を 投げる

空に林檎の実を 投げる

めくら めっぽう あてずっぽう

まっすぐ 空に ぶつかって

まっすぐ 雲を つきぬける。

 

投げるのは うんざり

ちょっと水浴びが したくなった

ざぶ

ざぶ

ざぶ

ざぶ

ちょっと水浴びが したくなった。

 

ご覧ください

ご覧ください

どうやって 水の下で おれが泳ぐか

どうやって 足をバタバタさせて

それを頭で 助けるか。

 

人々は岸辺で叫ぶ

 

「魚 魚 魚 魚

 魚 水の住人たち

 これらの 魚たち

 魚たちでさえ

 あんたより うまくは 泳げないよ!

 

 俺は言う

 

「水浴びには うんざり

小さな川で 泳ぐなんて

とんで はねて

砂の上に寝転がるほうがましさ。」

 

水浴びは うんざり

おれは 岸辺を走る

右に 左に

まっすぐ走る ぐるぐる走る

もう おれは 走って 走って 走って

疲れた

腰かけに腰かけて、走るのは

やめた

 

以下 同文

 

(1929年5月17日)